ゆるり中医学~国際中医師が綴る生活に中医学を~

国際中医師、薬剤師が綴る中医学です。

中医学入門111 薬膳レシピ 秋偏

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

前回に引き続き、秋のお話をしていきます。

今回は秋の薬膳です。

秋のキーワードは

“燥”“肺”“収”

でしたね。

五行色体表からみてみると

五臓:肺

五季:秋

五気:乾

五色:白

五味:辛

なのでここに当てはまるものがまずは秋におすすめの食材になるのが分かりますね。

・白いもの

白ごま、えのき、れんこん、豆腐、白きくらげ

・辛いもの

ねぎ、生姜

辛いものは肺を助けてくれる効果がありますが

摂り過ぎると発汗や発散によりかえって身体の水分を減らしてしまうことがあります。

摂取する時は適量がいいでしょう。

この時期に激辛のものを摂るのは控えることをお勧めします。

また食物性味表よりこの時期に良い食べ物をみていきましょう。

・肺を潤す効果のある食材

:山芋、春菊、松の実、果物類(梨、バナナ、みかん、リンゴ、柿など)

・津液を生じて体内を潤す食材

:豆腐、豆乳、トマト、もやし、れんこん

以上の食材の中には身体を冷やす“寒性”や“涼性”のものもありますので

果物や食材を生のまま大量に摂取すると身体の冷えにつながりますので

量を控えめにしたり、温められるものは調理して摂るといいでしょう。

 

ここからは以上の食材を用いた、薬膳レシピについてみていきます。

≪山芋の梅肉あえ≫ 「女性のための漢方生活レッスン」P.117より

①山芋(7センチ)は短冊切りにする

②梅干し(1~2個)は種を除いたあとに、たたいてなめらかにする

③これらを器にいれて、粘りが出るまでよくあえる

④酸味がつよければ、みりんを加える

完成

ここでこのレシピの考察です。

【山芋】

四性:平/甘

帰経:肺脾腎

効果:健脾・補気・滋陰・潤肺

 

【梅干し】(梅)

四性:平/渋酸

帰経:肝脾肺大腸

効果:生津・収れん・化痰

 

【みりん】

四性:温/甘

 

このレシピは肺を潤すだけではなく

脾を元気にして疲労を回復したりします。

また梅干しの“酸”とみりんの“甘”があるので

陰液を補い、身体をうるおす酸と甘の組み合わせも期待できます。

 

このように薬膳をわざわざ作るのは大変という方は

毎日の食事に手軽に取り入れる方法があります。

そのひとつにお味噌汁があります。

いつものお味噌汁に潤い食材のどれかを入れることで

これも立派な薬膳になります。

私は先生にエノキは潤い生薬の代用になると聞いてからは

乾燥が気になる季節になりますと

お味噌汁にほぼ毎回エノキを入れるようにしています。

またお豆腐も取り入れやすいですね。

 

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門110 方剤学&生薬 秋偏

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

前回までで病因論はひと段落しました。

 

先週から季節はすっかり夏から秋めいてきましたね。

ブログ㉚で秋の養生でもお話したと思いますが

秋は

“燥”“肺”“収”

がキーワードです。

この時期の養生をしっかりとすることで

冬に向けての体調を整えることができます。

毎回この時期に体調を崩しやすい方もいるのではないでしょうか。

せっかくすごしやすくなったいい季節なので

体調を崩してしまうのはもったいないですよね。

そんな秋にするとよいこと、出番が増える方剤、生薬について

今回はお話していきます。

 

今までの夏はじめじめとした“湿”でしたが

最近は“燥”を感じる機会が増えてきていませんか?

肌は一番わかりやすいと思いますが

身体の中の臓器も乾燥してきています。

この“燥”の影響を受けるのが“肺”です。

肺はみずみずしい状態を好む臓器なので

乾燥は大敵です。

するとよいこととしては

湿度の変化に注意する(55%を目安に)

乾燥を感じたら加湿する、もしくはマスクをする

潤いの摂れる食材を摂る

汗をかき過ぎない

などです。

加湿は分かりやすいと思います。

汗をかき過ぎないというのは

汗で陰液を消耗すると、

体内の潤いが失われしまうためです。

夏のようにアクティブに動き過ぎると

気を消耗してしまったり

汗をかいて陰液を消耗してしまいます。

気を消耗すると

身体の冬にむけての準備ができなくなってしまいます。

冬に向けてペースを落として

寒さに備える準備をしましょう。

 

さて秋にそなえておくといい方剤について説明していきましょう。

・麦門冬湯(ばくもんどうとう)

こう方剤の構成をみてみると乾燥を潤してくれることが分かると思います。

秋の乾燥の“燥”の邪気にやられて、空咳が出た際に合う方剤ということが分かりますね。

使う際に注意することは身体を冷やす生薬が多いことを頭におくこと、

痰が多い場合に使うと余計に痰をうんでしまうので避けることです。

自分の症状をよく観察してみてください。

 

つぎに生薬について説明しましょう。

・板藍根(バンランコン)

こちらの生薬も身体を冷やす作用がありますので頭にとめておいてください。

 

麦門冬湯は方剤として医療用にもあるので病院で処方してもらうこともあるでしょうし

OTCとしても多くのメーカーで販売されているため、薬局などで購入することもできます。

一方、生薬の板藍根はどのようにしてとり入れたらいいかといいますと

エキス剤としても販売されていますし

のど飴としても販売されています。

 

 

 

これからの季節に風邪予防としてお手元に常備しておいてもいいですね。

何事も重症になってからでは治すにも時間がかかりますので

ちょっとおかしいかなと思った時に養生することが

早期解決の決め手になります。

 

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門109 病因論~その10

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

病因には

①外因

②内因

③不内外因

があります。

今回は③の不内外因についてのお話です。

不内外因とは内因でも外因でもないもの

たとえば

食性生活の不摂生

乱れた生活習慣

中毒

遺伝

などがあります。

 

中医学の言葉でこれらは

飲食不節

労逸(ろういつ)

といいます。

具体的な内容をみていきましょう。

 

・飲食不節

文字の通り飲食の不摂生になります。

・労逸(ろういつ)

動き過ぎも身体に負担になりますが、じつは休み過ぎも負担になるのです。

 

休日にたくさん休んだはずなのに、かえって疲れてしまうこともありますよね。

休み過ぎることで血行不良になって、かえって身体にとって良くないことになる。

これは“逸”という中医学ならではの考え方になります。

 

これらが内因でも外因でもない、不内外因ついての主な原因になります。

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門108 病因論~その9 内因

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

内因の要因

②精神的なものについて

の続き

七情

についてみていきましょう。

今回は驚・恐についてです。

 

⑤驚・恐

五臓:腎

 

腎は心の作用を補助する作用があるので

驚きすぎると気の流れが乱れて

精神不安をおこします。

 

また気のはたらきには固摂作用という

あるものを正しい位置でキープするはたらきがあります。

恐れすぎて気が下がり、この固摂作用が失調すると

大便や小便をとどめておくことができなくなり

大小便の失調がおこります。

 

ここまでが内因の精神的な要因の七情についてでした。

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門107 病因論~その8 内因

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

内因の要因

②精神的なものについて

の続き

七情

についてです。

今回は思・悲・憂についてみていきましょう。

 

③思

五臓:脾

脾のはたらきは飲食物の消化吸収を管理する

=運化(うんか)をつかさとるでしたので

思い過ぎて思いつめて運化作用が失調すると

食欲の低下

お腹の張り

便が緩い

などが起こります。

悩みごとが気になって食事が喉を通らないといった場合も

この脾の思いつめて気が詰まっている状態ですね。

 

④悲・憂

五臓:肺

肺のはたらきは呼吸をにない、呼吸によって気を生み出す

=呼吸をつかさどる

でしたので

悲しんだり、憂い(うれい)過ぎてこの作用が失調して

肺の気が消耗して意気消沈となり

咳がでたり

息切れ

しゃべりたくない

などが起こります。

 

ちなみにここでは気が沈むとありますが

テキストによっては気が消える

ということもあります。

 

次回も七情の続きをみていきましょう。

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門106 病因論~その7 内因

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

内因の要因

②精神的なものについて

の続きです。

 

怒・喜・思・悲・憂・恐・驚の七情は

普段から身近な感情ではありますが

内臓に影響を及ぼす、

内因

となるのはどんな時でしょうか。

 

それは七情は

強烈で

長期間にわたって続く

刺激によって

内因

となります。

 

今回は怒・喜についてみていきましょう。

①怒

五臓:肝

肝のはたらきは全身の気を運行させる

=疏泄(そせつ)をつかさどる

でしたので

怒り過ぎることでこの疏泄作用が失調すると

めまい

頭痛

胸や脇の張った感じ

などが起こります。

 

②喜

五臓:心

心のはたらきは精神や意識をコントロールする

=神明(しんめい)をつかさどる

でしたので

喜びすぎることでこの作用が失調すると

不眠

動悸

精神の乱れ

などが起こります。



喜ぶというのは怒ることと比べてみると

いいことなのではとも思いますよね。

しかし中医学においても

良いことであっても過剰すぎることはよくないこととされています。

つまり喜びであっても過剰すぎると先に述べたように

精神に影響をきたしてしまうと考えられています。

なにごともほどほどがいいということですね。

 

次も七情を続けてみていきましょう。

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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中医学入門105 病因論~その6 内因

こんにちは。国際中医師、薬剤師の綴るゆるり中医学です。

病因論の内因の要因の2つめ

②精神的なものについてみていきましょう。

現代においてもストレス(感情)が病気の原因と言われることが多々ありますね。

中医学においてはずっと昔から感情・精神的なものと身体が深く結びついていると言われていました。

精神的なものとして感情の

怒・喜・思・悲・憂・恐・驚

この七つで表現して、これを

「七情」

と言います。

感情は身体の中にあるものなので、なにかトラブルがあった時は

内臓にダイレクトに反応して病気などを引き起こすことがあります。

この七情は五行の

木・火・土・金・水

と結びついていて

五行配当図でみてみると

五臓

肝・心・脾・肺・腎

とも密接に結びついています。

 

七情が関連する臓腑はこちらになります。

次回からは七情をひとつずつみていきましょう。

今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

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